Q 温根別にある「蛇紋岩」ってなに?
 地球の「地殻」の下の「マントル」をつくる「かんらん岩」が変化してできた石です.
 士別市の温根別の温根別ダムの近くには,蛇紋岩が露出しています.真っ黒なものや,深緑色なものや,表面がツルツルしているものがあります.蛇紋岩の中には「石綿」が入っていることがあって,以前は鉱石として採掘していました.今は石綿は肺ガンの原因になるということで掘ってません.蛇紋岩は銘石として,加工して飾り石にもされます.士別駅のショーケースの中に,加工した蛇紋岩があります.
 さて,蛇紋岩は「かんらん岩」という岩石が水と反応してできるものですが,このかんらん岩という岩石,実はかつての上部マントルをつくっていたものだといわれます.他の成因もありますが,士別近辺のものはそのようなものらしいです.地下数10キロ以上の深さにあったものなんですね.蛇紋岩の元になった,かんらん岩の中のかんらん石という鉱物は,宝石として「ペリドット」と呼ばれています.緑色の美しい宝石です.地球の内部は宝石でできているんですね.かんらん岩は,温根別の九線川や,温根別ダムの奥の五線川の河原にあります.でもそう簡単には見つからないよ.


Q 温根別にある「だんだん石」ってなに?
A 地下深くのマントルでつくられた石です。
 士別市温根別の河原には、茶色っぽい段々になった石が見つかります。地元の人は「だんだん石」と呼んでおり、大きなものは庭石として置いていたりします。これは地下数十キロの深さのマントルでつくられた岩石で、「かんらん岩」と「輝岩が層状に積み重なっている岩石です。非常に貴重な岩石であり、オフィオライトと呼ばれる海洋性の地質体でしか見られないものです。だんだん石は、元白山小学校の庭に大きなものが置いてあります。また、白黒の縞模様のある石もだんだん石と呼ばれることがあるようですが、こちらは「はんれい岩」というマグマがゆっくり固まった岩石で、先ほど説明した茶色のだんだん石よりも浅い場所でつくられたものです。“浅い”といっても地下数キロはありますが。

Q 幌加内の河原にある「パイ」みたいな縞模様の石の正体は?
 「結晶片岩」という岩石です.地下10km〜30kmの深いところでできた石です
 士別の西側の幌加内町の河原には「結晶片岩」という,細かい縞模様のある硬い石があります.この石は,海溝の地下数10キロ以上の深さでつくられた石で,もともと海底にあった砂や泥が海溝から地下にもぐっていき,深いところで高い圧力で変成され,それが再び地表に上がってきた岩石です.蛇紋岩が上がってきたところと同じあたりを通って上がってきました.そんな深いところから,どうやって上がってきたのでしょうね.これは,学者さん達も昔から一生懸命考えている,大変難しい謎なのです.幌加内の結晶片岩は1億年前から1億5000万年前ぐらいにつくられたといわれます.北海道で結晶片岩がたくさんある場所は,「神居古潭帯」といいます.旭川の神居古潭峡谷がその代表です.
Q 士別の街で見かける、庭や道路の緑色の石はなに?
 「緑色岩」という岩石です.1億年ぐらい前の海底の玄武岩が変質した岩石です.
 冬に,道路に緑の石の砕いたものを滑り止めにまいてあるのを見たことがあるでしょう?それと同じものが自分の家の軒下にもありませんか?あれは「緑色岩」という岩石です.実は1億年も前の岩石で、もとは海底の岩盤(玄武岩でできており,海洋プレートという)が長い時間の間に緑色に変質した岩石です.恐竜がいた時代ですね.中士別に大規模な採石場があります.ラーメン屋さんの青竜軒の前にある緑の岩石のベンチは中士別の緑色岩です。

Q 天塩川の河原に落ちていたり、庭石でもよく見かける縞模様の赤い石はなに?
 「チャート」という岩石です.1億年以上前の,海のプランクトンの固まった石です.
 チャートは,よく庭石としておいてある家があります.天塩川など,このあたりの河原にはたいてい落ちています.赤茶色で,白い線が入っていて,ちょっと生の肉に似ていることから,「肉石」といわれていたこともあります.その昔は火打ち石として使われていましたし,もっと昔は石器の材料としても使われていました.チャートは赤だけではなく,緑・灰色・白・黒など,いろいろな色のものがあります.これは海底4000メートルよりも深い深海底で,放散虫というプランクトン(ガラス質のカラを持っています)の死体が積もってできた石なんです.2億年から1億年前の古いものです.そんなすごい石だったとは!

Q 上士別の石灰山の石灰岩の正体は?
 昔のサンゴ礁が石になったものです.
 上士別の石灰山には,石灰岩という石があります.朝日町の「みずほ公園」にも大きな石灰岩があります.その他にも何カ所か石灰岩がありますが,これは実は2億年ぐらい前のサンゴ礁なのです.サンゴ礁?それって南の暖かい海にしかないんじゃないの?・・・そのとおりです.そうした暖かい海の中にあった島が,海底の岩盤と一緒に何千万年もかけて北海道まで運ばれてきたんです.海底は動いているんですね.石灰山の石灰岩には、もっと深い歴史があるのですが、そのあたりの詳しい話は「露頭探検隊」のコーナーで読んで下さい。
Q 温根別のアンモナイトって、どんな生物?
 中生代の頭足類(イカやタコの仲間)です.
 士別市温根別で、アンモナイトの化石が見つかっています.とは言っても,もともとあまり多くはなく、ほとんど拾われてしまったので,今ではほとんど見つかりません。博物館にいくつかの化石が展示してありますので,ぜひ今度見に行って下さい.
 アンモナイトというのは恐竜の時代(中生代)の海の生物です.貝殻を持っていますが,貝ではありません.イカやタコの仲間なんです.
 現在のオーストラリアの海には,「オウムガイ」という生物がいて,これはアンモナイトの親せきです.アンモナイトとは先祖が同じで,現在も生き残っているのです.九州にもアオイガイというタコがいて,これもそのような仲間です.浅い暖かな海にすんでいます.なんでそんなものの化石が温根別で見つかるのでしょうか?.8000万年くらい前,温根別は浅い暖かな海の入り江でした.アンモナイトは死ぬと貝殻だけ海を漂い,流れのない入り江にたどり着きます.そこの海底に静かに横たわり,泥がかぶって化石になったのです.


Q 温根別の亀甲石ってなに?
 泥が固まったノジュールというものです.
 亀甲石という石を見たことがありますか?まるでカメの甲羅のように見える石なんですよ.これはもともと泥が固まった泥岩なんです.実はこれ,泥の中にアンモナイトなんかがもともとあって,その殻が溶けだし,自分の周りの泥を硬く固めてしまったものなんです.接着剤の役割を果たしたわけですね.それが「ノジュール」というものです.では,なんでカメの甲羅のような模様が入っているんでしょう.それは泥岩のヒビに,殻の溶けた「接着剤」が入り込んでしまったためです.模様の所をよく見ると,キラキラと小さい結晶がたくさん見えます.これは「方解石」といって,炭酸カルシウム(アンモナイトなどの殻の成分)の結晶した石なんです.
 亀甲石は,士別市温根別のオロウエンベツ川や犬牛別川で見つかります.昔は観賞石として人気があったんですが,最近はあまり注目されていないようで・・・・・.


Q 剣淵の東側の山にある真っ黒い石(地層)はなに?
 深海に積もった泥が石になったものです.
 剣淵の桜岡には,黒い泥の固まった石(黒色頁岩)がたくさんあります.これは深い海の底にたまった泥ですが,よく見ると中にキラキラ金色に光るものがたくさん入っています.時にはかなり大きなかたまりもあります.「もしかして金?」・・・と思ってしまうのですが,そんなに世の中は甘くありません.これは「黄鉄鉱」という,鉄とイオウからできた鉱物です.これは鉄を含んでいるので,「酸素」の多いところではさびてしまいます.キラキラ光るということは,酸素のない海底,つまり深海とか,酸素が入りにくい特殊な海の堆積物ということなのです.たぶん何千メートルもの深さで堆積したものでしょう.この石も1億年ぐらい前の古いものです.

Q 上士別の川南の茶色い砂はなに?
A 花崗岩が風化してボロボロになった砂で、「マサ(真砂)」といいます.
 マサ(真砂)は,上士別の丘陵地に見られる砂ですが,ただの砂ではありません.これは花崗岩という岩石が風化してボロボロになった砂です.花崗岩はマグマが地下でゆっくり冷え固まった岩石で(こういう岩石を深成岩といいます)大きな結晶がびっしりつまっています.これが冷やされたり暖められたりを繰り返すと,結晶も膨張・収縮し,それぞれの結晶の体積の変化がまちまちであるためにすき間ができて,最後には砂になってしまうのです.水が入り込んで凍ると内部を破壊するということもあったでしょう.
 なぜ上士別のものがマサになったのかはナゾですが,このあたりは氷河期に「周氷河地域」となっており,その頃すでに地表に出ていた花崗岩が冷気に冷やされたりして,次第に風化が進んだものと思われます.


Q 朝日や剣淵にはどうして貝化石があるの?
 1500万年前,短い間海だった時期があるのです.
 朝日町や剣淵町では,わずかに貝化石を含む地層が分布しています.だいたい1500万年前の地層です.このあたりは新生代には陸の地層が多いのですが,なぜポツンと海の地層があるのでしょう?
 実は1500万年前に,北海道だけでなく,世界中の海水準が上がったらしいのです.地球温暖化ですね。そのため,西側の日本海が内陸に入り込んできて,士別から朝日にかけて細長い湾ができていました.こういう状況はそう長くは続かず,1300万年前には再び陸地となりました. 
※剣淵の化石層は高速道路の工事が終了したため,現在は観察できません.


Q 剣淵焼きってどうやってつくるの?
 「剣淵焼き」は剣淵の良質な粘土を使った焼き物です.
 剣淵には焼き物で有名な「剣淵粘土」があります.この粘土,とても良質なものですが,その年代を特殊な方法で測ってみると,なんと2億年前ぐらいのものだそうです.それが地表にあるのです.これは,元々中国大陸にあった古い粘土が風で飛ばされてきたものだそうです.いわゆる「黄砂」ですね.飛んできた粘土は,6万〜4万年前に堆積しました.カリウムが多く含まれており,比較的低い温度で溶融を始めるため,野焼きなどにも向いています.焼きものについては士別市立博物館特別学芸員の堤生野さん(旭川市在住)が詳しいです.