第106回 (2018年3月 更新)
下川町落合沢の下川鉱山(その2)

 このコーナーでは,士別周辺の露頭をピックアップして,その様子を紹介して,その見どころやエピソードをお伝えします.いろいろな場所が登場しますので,皆さんも地質調査をしているつもりで楽しんで下さい.以前のこのコーナーに登場したものを見たい人は,このページの下の方から入って見て下さい.

 下川町落合沢の下川鉱山の探検の続きです。
 バスを留めてズリ山の斜面に登りました.きれいに整地されています.草も生えていてネットで覆われています.参加者は「こんな所でホントに鉱石が採れるの?」という雰囲気・・・.整地されているので,スコップでほじくるわけにはいきません.以前は草もなく,簡単にたくさん見つかったのですが.さて・・・.
 これはここに本当に鉱石があることを参加者に見せてあげなくてはならないですね・・・.ほら,見つかりました!これです.よく見ると斜面の表面のあちこちに,こんな鉄サビ色の石が落ちています.これを探すんですよ.
 斜面の奥の方には,草が生えていないところもありました.ここには鉄サビ色の石がゴロゴロしています.しかし,問題がひとつ.ここは「ズリ捨て山」でしたね.ということは,純度が低くて使えない石を捨てた場所ということです.つまり,ここで見つかる鉱石はほとんどが純度が低い,「ただの石」なのです.・・・それじゃダメじゃん!,というところですが,実は探せば少量ですが高品質の鉱石が見つかるんです.ただ,質のいい鉱石も,質の悪い鉱石も,どちらも鉱石には違いなく,表面は同じようにさびて茶色になっています.見た目では質の良さがわからないということなんですね.
 その見分け方のポイントが「重さ」です.金属が多いほど重たいので,まず茶色の石を見つけたら拾い上げて,重かったらハンマーで割ってみる.軽かったら割らずに捨てる.重かったからといってきれいなものが見つかるとは限りませんが,見つかる確率が高くなります.質のよいものほど硬く,ハンマーでもなかなか割れません.丁寧に作業を続けると,写真のように金色の鉱石がいくつも見つかりました.右側の鉱石は全体が金色できれいですね.重さもずっしりした重さです.左のものは縞模様の入った岩石の中に,部分的に金色の金属濃集部があります.
 下川の金色の銅鉱石は,正式には「含銅硫化鉄鉱」といいます.銅を含む硫化鉄鉱石という意味で,成分としては鉄と硫黄と銅ということですね.ハンマーでたたいていると,温泉のような硫黄のにおいがしてきます.中生代白亜紀の深海底の「ブラックスモーカー」から吹き出した金属の粉が海底に堆積してできた熱水鉱床なんです.
 ところでこの金色の鉱石は,やすりで磨いていくととても美しく輝きます.コンパウンドで仕上げると,顔が映るくらいになりますよ.私はこれを「
下川の古代の鏡」と呼んでいます.実物画像がなくてすみません.

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