露頭探検隊

第2回(1ページ目)

 このコーナーでは,士別周辺の露頭をピックアップして,その様子を紹介して,その見どころやエピソードをお伝えします.いろいろな場所が登場しますので,皆さんも地質調査をしているつもりで楽しんで下さい.以前のこのコーナーに登場したものを見たい人は,このページの下の方から入って見て下さい.

 和寒町東和の東和コンプレックス

 このコーナーの第2弾は,不思議な露頭,「東和コンプレックス」の登場です.何が不思議なんでしょうか? すでに地質案内で紹介してありますが,もう少し詳しくお見せいたしましょう.露頭は国道40号線から剣淵温泉に向かい,温泉を通り過ぎて1Kmほど走ったあたりの左手にあります.

 露頭の中央部です.緑色岩・泥質岩・チャートを主体としています.断層だらけでどんな構造になっているのか,さっぱりわかりません.
 中生代白亜紀前期のメランジといわれており,深海性のもの(チャートや枕状溶岩)と浅海性(海山など)のものがごちゃ混ぜになっています.大変不思議なことですが,それはこの場所がかつての海溝であり,様々な海洋性物質が「付加」したり,陸側からの岩石などが落ちてきたり流されてきたりしてできたものと考えられています.こうしたものを「メランジコンプレックス」といいます.
 ちょっとわかりづらいですが,これは枕状溶岩です(・・・と思います).下の方の写真の発泡した玄武岩とは異なり,発泡は見られず,丸い塊が観察されます.はっきりわかりませんが,たぶん深海底での玄武岩質溶岩の噴出によるものでしょう.
 海洋プレートは中央海嶺で生まれますが,そこは地下から玄武岩質マグマが湧き上がってくる場所です.通常は深海底にありますから,枕状溶岩が大量に生成される場所でもあります.
 露頭を調査中の平松和彦先生(旭川西高校).ご案内いただいたとき,「とにかくこれは大変貴重なすごい露頭なんだ」と熱く語っておられたのが印象的です.これは露頭の左側で,深海底堆積物であるチャートのブロックが泥質岩中に見られます.
 ブーダン構造(ソーセージ状に挟まれた地層)を持ったチャートです.泥質岩に挟み込まれています.チャートといえば深海底.そうです,4000m以上の深さの海底堆積物ですね.チャートは元はプランクトン遺骸です.暗い海の中をゆっくり降下するマリンスノーを想像してみて下さい.
 露頭右側にはたくさんの穴あきの緑色岩(玄武岩)が落ちています.水圧の低い比較的浅い海底で玄武岩質の溶岩が流れ出すと,溶岩の中のガス成分が減圧のために膨張して,このようなものができます.これは海山起源の岩石と考えられるわけです.石灰岩もあるようですので,かつての火山島だったものでしょう.現在のハワイのような火山島だったのかな?

 この露頭は私が士別高校に転勤してきてまもなく,旭川西高校の平松先生(現福山市立大学)に連れて行ってもらったところです.初めて見たときは「ナニガナンダカ,ワカランナ??」という感じでした.もちろん今もそんな感じです.以前はこの露頭の周囲にもたくさんの露頭があったそうですが,今はこれだけです.まさに「ここが中生代の海溝」という場所でもあり,この貴重な露頭だけは残って欲しいものだと思います.

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  第1回 剣淵町刈分川の刈分川層