第81回 (2010年8月2日更新)
士別市上士別の石灰山(その4)

 このコーナーでは,士別周辺の露頭をピックアップして,その様子を紹介して,その見どころやエピソードをお伝えします.いろいろな場所が登場しますので,皆さんも地質調査をしているつもりで楽しんで下さい.以前のこのコーナーに登場したものを見たい人は,このページの下の方から入って見て下さい.

 士別市上士別の石灰山(新士別鉱山)の探険の続きです。
 石灰山にはいろいろ珍しいものもあるんだな、ということがわかったところで、もうひとつ地味に珍しいものを紹介します。写真のトゲトゲした鉱物は、2003年の博物館の地質巡検で見つかったものです。それぞれのトゲの長さは1cm程度の小さなものですが、無色透明の鉱物です。石灰岩に付着していたので、方解石だろうと推定されましたが、一般的な方解石とは形がちがうので(下の写真参照)、特別学芸員の石井彰洋さんが詳しく調べました。肉眼や顕微鏡で見ていてもわかりませんので、「X線粉末回析法」という方法を使いました。地学の世界では伝統的に使われている方法で、この研究によってこの鉱物は「犬牙状方解石(けんがじょうほうかいせき)」という、ちょっと珍しい形状の方解石であることがわかりました。詳しくは士別市立博物館の館報に論文が掲載されています。
 この写真は一般的な方解石の形です(購入品)。菱形の特徴的な形をしていて、先ほどのトゲトゲ鉱物(犬牙状方解石)とはだいぶ形がちがうことがわかりますね。ところで、石材などで知られている「大理石」は、実は方解石であり、面白いことに、大理石をハンマーで小さく砕いていくと、その破片は菱形の形になっていきます。ルーペなどで見るとよくわかります。大理石は100円ショップでも売っていてますので、ぜひやってみて下さい。ちなみに台所用の研磨剤には、大理石の粉末が使われています。この菱形のカドが汚れ落としに有効で、なおかつ方解石はそれほど硬くないので、キズをつけないということなんですね。方解石の知られざる活用方法です。

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