露頭探検隊
第 3 回

 このコーナーでは,士別周辺の露頭をピックアップして,その様子を紹介して,その見どころやエピソードをお伝えします.いろいろな場所が登場しますので,皆さんも地質調査をしているつもりで楽しんで下さい.以前のこのコーナーに登場したものを見たい人は,このページの下の方から入って見て下さい.

 士別市温根別のマムシ沢

 このコーナーの第3弾は,露頭ではなくてマムシ沢を見てみましょう.士別市温根別市街地を抜けると,右折したら添牛内方面に進む道があります.角には太田商店があります.ここを右折せずに直進します.ずっと行くと温根別ダムに出ます.このダムサイトを右に渡りますと分かれ道になります.左は五線川林道,右はマムシ沢林道です.マムシ沢林道を走っていくと河原に行けます.ここがマムシ沢です.世界的に有名な「幌加内オフィオライト」を構成する岩石がゴチャゴチャに出現するゾーンとなっています.最上流部には犬牛別山があり,そこから多数の蛇紋岩やかんらん岩など,地下深い「マントル」をつくっていた岩石が流れついています.おそらく世界初の発見となる「リヒター閃石岩」という岩石を,1997年にここで発見しました.

 マムシ沢です.うす茶色に見える岩石は蛇紋岩やかんらん岩です.この沢では温根別ダム近辺とは違って,かんらん岩は完全には蛇紋岩化されていません.沢は浅くて歩きやすいですが,なにせ道がないのでここは水の中を歩くしかありません.クマ出没の可能性も高いです.私は何十個か鈴やベルをつけて,ホイッスルを吹きながら歩きます(大声で歌ったり・・・).
 露頭は多くありませんが,ポツポツと点在しています.これはドレライト(粗粒玄武岩)の露頭です.地下の岩脈だったものでしょう.写っているのは石井彰洋さん.2001年5月に行ったときですが,私は川で転倒し,全身ずぶぬれになってしまいました.ま,よくあることで・・・・・.
 ハイアロクラスタイトです.ハイアロクラスタイトは,海底の火山が噴火したときにできるもので,周囲の岩石を破壊しながら溶岩が流れたりして,溶岩と破砕された岩石がゴチャゴチャになったものです.幌加内オフィオライト上部のものです.中生代ジュラ紀の空知海台(海底の台地)生成の時のものでしょうか.
 河原の転石の斑れい岩です.河原には多量の斑れい岩が観察され,いずれもはっきりとした層状構造が見られます.地下深いところでできた深成岩ですが,マグマがゆっくりと対流して層状構造をつくったものと思われます.趣のある石なので,庭に置いておくにはなかなかいいかも.
 露頭右側は蛇紋岩,左側は緑色岩です.境界ははっきりしませんが,常識的に考えれば断層しかありません.このあたりの蛇紋岩はかなり粘土化しているものもあり,その道の人によればそれを焼き物に混ぜると金色に発色するとか....←その後、実際にやってくれた人がいました。渋い金色でした。
 河床に露出する角閃岩です.角閃岩は斑れい岩・玄武岩などが変成されてできる岩石ですが,ここのものの多くは,斑れい岩が角閃岩になったものらしく,両者が遷移しているようすがあちこちで観察されます.
 さて新発見! 「リヒター閃石(岩石コーナーを参照)」が,蛇紋岩にへばりついています.リヒター閃石は角閃石の一種ですが,あまり報告例も多くなく,勿論士別では初の発見です.蛇紋岩にへばりついた状態の報告も聞いたことがない.これでリヒター閃石の起源が少しわかりました.超苦鉄質岩の一部(おそらく斜方輝石岩の部分)が何らかの特殊な条件で角閃岩に変成されたものだったんですね.どのような変成条件だったのか,不思議なことがいっぱいです.

 マムシ沢は幌加内オフィオライトの研究にはかかせない場所です.はっきりいって層序はメチャクチャなので,「モノを見る」ということだけですが.それにしてもいろいろなものがあります.きりがないのでここではほんの一部を紹介しましたが,落ちている石を見ているだけで結構楽しい場所です.

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過去の露頭探検隊を見る
  第1回 剣淵町刈分川の刈分川層
  第2回 和寒町東和の東和コンプレックス