露頭探検隊

第 4 回

 このコーナーでは,士別周辺の露頭をピックアップして,その様子を紹介して,その見どころやエピソードをお伝えします.いろいろな場所が登場しますので,皆さんも地質調査をしているつもりで楽しんで下さい.以前のこのコーナーに登場したものを見たい人は,このページの下の方から入って見て下さい.

 剣淵町弥栄川の弥栄川層

 このコーナーの第4弾は,剣淵町の弥栄川付近,高速道路の工事現場です(2001年当時).国道40号線沿いの東側にあります.このあたりは中生代の地層(イドンナップ帯)の分布域なのですが,局所的に新生代新第三紀中新世の地層である弥栄川層が見られます(現在は観察できません).何気なく見ていたら,貝化石が!!!.その他もよく見ると結構面白い.さてさて? 

 工事現場はこんな感じです.現在はすでに観察できなくなってしまいました.ここは作業道の工事らしく,ややゆっくりペースで工事が進んでいます.でも,小泉政権になって高速道路の建設計画が中断しそう! ということで現場の人達は殺気立ってるかも?? 何の変哲もない露頭ですが,ここに新発見が!!
 写真左側は中生代のイドンナップ帯の緑色岩(溶岩だったもの),右側は新生代中新世の砂岩と泥岩です.この境界はどうみても断層ではないなぁ.不整合ですね.境界部がグニャグニャです.おそらく緑色岩が現地形(海底の岩盤)をつくっていて,そこに海が入り込んで砂岩泥岩が堆積した感じです.境界部にはわずかに緑色岩や黒色頁岩の角礫があります.
 ちょっと右側に進みます.新生代の砂岩層のゾーンです.人物(石井彰洋さん:士別小学校)が立っているあたりに三角形の色の濃い部分がありますが,これは中生代の緑色岩の大きなブロックと思われます.断層なのかな?と初めは思ったのですが,どうもちがうようです(・・・と考えたのは石井さん).砂岩や泥岩の中に緑色岩の塊がドカッと入っていることは普通はありません.海岸の崖をつくっていた岩石が崩れて,海底の砂の上に落ち込んだものでしょう.
 上の写真の緑色岩の右端の,緑色岩と砂岩の境界です(左が緑色岩で右が砂岩).やはり断層ではなさそうです.境界部がフニャフニャになっているでしょう? 緑色岩ブロックの上に砂岩が堆積したものだと思います.
 さらに砂岩に近づいてみました.白っぽく見えるのは貝化石です.タマキガイ,タマガイ,キリガイダマシなどがあります.保存状態はあまり・・・・.しかし確実な海成層で,剣淵の新生代の地層で,はっきりと海成層とわかるものはここだけです.貴重!!!.
 タガネの左上などに,黒色頁岩の角礫がいくつか見えます.新生代の泥岩の中に中生代の地層の角礫がたくさんあるわけです.この他にも数十センチ大の角礫が随所に見られ,その親玉がさっきの巨大な緑色岩ブロックと考えられます.これらも崖からバラバラと落ちてきたものと考えています.

 士別付近は,中新世の海の地層はほとんど見られない場所です.西側の幌加内には海の地層がたくさんありますが,士別近辺はちょうど海岸線であった場所のようです.海水準が上昇したときのみ,一時的に海成層がつくられたものと思われます.1500万年前頃,世界的海水準上昇(地球温暖化か?)があったといわれており,この弥栄川層もそのときの地層と思われます.
 海水準上昇となると考えられる地形としては地理で学ぶ「リアス式海岸」や「多島海」が思い浮かびます.弥栄川層に含まれる大きな岩石のブロックの存在は,当時このあたりがそのような地形であったことを裏付けるものと考えています.

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過去の露頭探検隊を見る
  第1回 剣淵町刈分川の刈分川層
  第2回 和寒町東和の東和コンプレックス
  第3回 士別市温根別のマムシ沢