露頭探検隊

第 5 回

 このコーナーでは,士別周辺の露頭をピックアップして,その様子を紹介して,その見どころやエピソードをお伝えします.いろいろな場所が登場しますので,皆さんも地質調査をしているつもりで楽しんで下さい.以前のこのコーナーに登場したものを見たい人は,このページの下の方から入って見て下さい.

 上士別と朝日町の石灰岩

 このコーナーの第5弾は,上士別と朝日町にある,石灰岩の紹介です.上士別と朝日町の境界付近には「石灰山」という石灰岩でできた山があります.かつてセメントの原料として採掘され,しばらく休山しておりましたが,現在再操業に向けて準備中です.この近辺にはその他にもいくつかの石灰岩体があり,朝日町の「みずほ公園」や朝日町の入り口の木材工場の裏にも石灰岩が観察されます.

 国道から見た石灰山です.木のないところがかつて石灰岩を採掘していたところです.この山は全体が石灰岩でできていますが,周囲は深海底堆積物であるチャートや,同じく深海底の黒色泥岩などで囲まれています.
 石灰山に近づいてみました.さすがは石灰山というだけあって,石灰岩だらけです.やや変成した真っ白なものや,堆積構造の残った灰色のものなど様々ですが,品位は良好なようです.
 さて,この石灰岩は,もとはサンゴ礁だったものです.それもなんと2億年ぐらい前のもので,そのころの海洋島を起源とするものです.
 しかし,サンゴ礁は海の浅いところにつくられるものですが,石灰山の周囲には深海底のチャートなどがあります.これはどうしたことでしょうか? しかも,チャートなどの年代はせいぜい1億年くらい前か,それよりも新しい年代を示します. 不思議ですね.
 このナゾは,2億年前に存在していたサンゴ礁をのせた海洋島が海洋プレートとともに北上し,海溝付近に付加してから長い年月を経て,それが1億年前に崩壊して,その時代の堆積物中に落ちてきたということのようです. 
 朝日町のみずほ公園の石灰岩です.石灰山とはちょっと離れていますが,おそらく同じ起源のもので,1億年前くらいに海溝壁から海底に崩壊して散乱した石灰岩の一部でしょう.何千メートルも海溝を落下してバラバラになったものでしょうか.それとも付加した頃にすでにバラバラになっていたものでしょうか....
 同じくみずほ公園の石灰岩ですが,写真左側には緑色のチャートがあります.手軽に浅海のもの(石灰岩)と深海のもの(チャート)がワンセットになって観察できる場所です.そういう場所は非常に少ないのですが,これと良く似たものが旭川市の「男山(突哨山)」でも観察されます.
 上士別の灰色の石灰岩を研磨してみました.白く丸いツブツブがたくさんあります.大きさは1ミリぐらいです.これは化石ではなく,ウーライトというもので,石灰質の泥の球です.サンゴ礁の海岸で,珊瑚が削られてできた泥が浅い海底の波でゆすられ,小さな雪だるまのようになってできたものです.2億年前の暖かい浅い海で揺れる波を想像してみてください.
 ウーライトの薄片写真です.士別小学校の石井さんがつくってくれました.同心円状の構造がわかります.初めは私は珊瑚の化石かと思っていたのですが,薄片を観察して違うものだとわかったのです.

 以前,和寒町東和の東和コンプレックスをご紹介しましたが,それも海溝付加体であり,深海性のものと浅海成のものがごちゃ混ぜになったものでした.今回のものは,それがもっとはっきりわかるものです.このあたりは中生代に「海溝」だったのだということがおわかりになりましたか?

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過去の露頭探検隊を見る
  第1回 剣淵町刈分川の刈分川層
  第2回 和寒町東和の東和コンプレックス
  第3回 士別市温根別のマムシ沢
  第4回 剣淵町弥栄川の弥栄川層