第 8 回

 このコーナーでは,士別周辺の露頭をピックアップして,その様子を紹介して,その見どころやエピソードをお伝えします.いろいろな場所が登場しますので,皆さんも地質調査をしているつもりで楽しんで下さい.以前のこのコーナーに登場したものを見たい人は,このページの下の方から入って見て下さい.

 剣淵町弥栄川の弥栄川緑色岩体(その1)

 このコーナーの第8弾は,剣淵町6線,弥栄川(いやさかがわ)流域の「弥栄川緑色岩体」です.ん?弥栄川?以前にこのコーナーに登場しなかったっけ? そうですね.第4回に,「弥栄川層」という地層が出てきました.それは約1500万年前の新生代の地層でしたが,今回は中生代白亜紀,約1億年前の岩体です.士別から剣淵に向かって国道40号線を走り,温泉に向かう道よりも1本手前の舗装道路を左折,ちょっと走ると左手に露頭が見えます.

 露頭の全景です.以前は岩石がよく見えたのですが,この数年でかなり表面が崩れてしまい,全体が緑の砂で覆われたような感じになってしまいました.
 緑色岩(変質した玄武岩)を中心とした露頭で,砂岩や変質した石灰岩がもあります.以前,いくつかの中生代の緑色岩をご紹介いたしましたが,それらは海洋プレートや海底火山でした.ここの緑色岩は石灰岩が見られることから,ハワイのような海洋島であったと考えられます.石灰岩はもちろんサンゴ礁だったものですね!
 これは緑色岩中の変質した石灰岩です(百円玉の上方の色の薄いところ).ここの緑色岩はもともと溶岩だったものでしょうから,サンゴ礁の上を溶岩が流れ,巻き込んでしまったものと思われます.上士別や朝日町の石灰岩とは異なり,かなり変質しているのは,溶岩の熱によるものでしょう.一応「大理石」ということになるのでしょうが,皆さんの知っているような結晶の大きなものではありません.
 先ほどの写真の露頭からちょっと右側に進んだところの露頭です.緑色のチャートが見えています.深海底に堆積したプランクトンによるものです.海洋島の底部に堆積したものでしょうか.とてもしっかりしたきれいなチャートで,特に変成も受けておらず,放散虫の化石が見られます.
 チャート層の向かい側に出ている緑色岩ですが,白いツブツブがたくさんあります.これは玄武岩溶岩の発泡した跡で,一般的には比較的水圧の低いところでの噴出を示すものと言われています.たぶん海洋島の溶岩でしょう.ここでもまた深いところのものと,浅いところのものがゴッチャになっているのです.海溝でつくられた「付加体」ですね.

 私は士別周辺をあちこち調べていますが,ここの露頭には特に興味を持っています.ここの緑色岩を中心とする地層は「イドンナップ帯」というゾーンに属するもので,海山を中心とした付加体です.日高方面では詳しい研究が行われていますが,道北地方ではほとんど研究が進んでおらず,詳細は不明です.なにせ露出が少ないため,難しい題材です.

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過去の露頭探検隊を見る
  第1回 剣淵町刈分川の刈分川層
  第2回 和寒町東和の東和コンプレックス
  第3回 士別市温根別のマムシ沢
  第4回 剣淵町弥栄川の弥栄川層
  第5回 上士別・朝日町の石灰岩
  第6回 士別市温根別のエゾ累層群
  第7回 士別市上士別の花崗岩