第 9 回

 このコーナーでは,士別周辺の露頭をピックアップして,その様子を紹介して,その見どころやエピソードをお伝えします.いろいろな場所が登場しますので,皆さんも地質調査をしているつもりで楽しんで下さい.以前のこのコーナーに登場したものを見たい人は,このページの下の方から入って見て下さい.

 剣淵町弥栄川の弥栄川緑色岩体(その2)

 このコーナーの第9弾は,剣淵町6線,弥栄川流域の「弥栄川緑色岩体」続編です.国道40号線沿いに露頭がいくつか点在しています.当時の高速道路建設のため,新しい露頭も出現しており,新しい発見もありましたが、現在はほとんど見えなくなっています。

 前回紹介した露頭の西側,国道40号線沿いの露頭です.塊状(?)玄武岩と泥質岩が観察されます.
 春の残雪の時期にこの崖を登っていったとき,頂上に夏毛に変わり始めた野ウサギがいました.ウサギは私に驚いて逃げ出したのですが,30メートルほど走った所で急に止まってしまったではありませんか! 「なんで遠くに逃げていかんのだ?」と思ったら,そこは残雪の場所.そう,このウサギは自分が夏毛に変わり始めたことを知らなかったようです.「自分は白い」と思いこんでいて,白い雪の上でじっとしていたというわけです.思いっきり目立ってました.
 これは上の写真と同じ場所なんです.高速道路の建設のため,こんな感じになりました.下の方に,刈分川で観察されたような黒色泥岩があります.全体としては火山性の凝灰質泥岩が中心ですが,その中に砂岩のブロックも見られます.海山が噴火の際に表面が崩壊して取り込まれたものでしょうか.
 ちょっと北の方に行ってみましょう.剣淵町8線です.現在はここもかなり削られてしまいました.タランボがいっぱいあったんですがね.見たところただの風化したボロボロの露頭なんですが,実は.....
 さて,これがその露頭に見られるものです.写真ではわかりにくいでしょうが,中央に丸い形が見えませんか? これは,枕状溶岩というものです.放射状の節理も見られます.「ミニ車石」といったところでしょうか.
 深海底で玄武岩の溶岩が噴出すると,その水圧のために発泡したりせず,ウネウネとチューブ状に流れるのです.そのためいくつも枕を並べたような状態となり,こんな丸い断面が見られるようになります.このあたりでこんなにはっきり枕のように見えるものはここだけです.貴重な露頭なんですが,全く見えなくなってしまいました。
 露頭下部のハイアロクラスタイトです.これは噴火の際に周囲の岩石が粉々に砕け散ったものです.海底での激しい噴火が想像されます.

 中生代の海山付加体である弥栄川緑色岩体,いかがでしたか? 以前ご紹介した和寒町の東和コンプレックスは,実はこの緑色岩体の仲間です.同じイドンナップ帯に属するものですが,こちらは石灰岩なども観察され,より海洋島をイメージさせるものです.現在のハワイは,地下のホットスポットと呼ばれる熱源によってつくられており,ハワイ西方の海底には「かつてハワイだった」火山の名残が点々とつながっています.これらはやがて海溝に付加していく運命にあります.弥栄川緑色岩体は白亜紀にそうしたことが起きたためできたものなのです.

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過去の露頭探検隊を見る
  第1回 剣淵町刈分川の刈分川層
  第2回 和寒町東和の東和コンプレックス
  第3回 士別市温根別のマムシ沢
  第4回 剣淵町弥栄川の弥栄川層
  第5回 上士別・朝日町の石灰岩
  第6回 士別市温根別のエゾ累層群
  第7回 士別市上士別の花崗岩
  第8回 剣淵町弥栄川の弥栄川緑色岩体(その1)