第 7 回

 このコーナーでは,士別周辺の露頭をピックアップして,その様子を紹介して,その見どころやエピソードをお伝えします.いろいろな場所が登場しますので,皆さんも地質調査をしているつもりで楽しんで下さい.以前のこのコーナーに登場したものを見たい人は,このページの下の方から入って見て下さい.

 士別市上士別の花崗岩

 このコーナーの第7弾は,士別市上士別の花崗岩採石場です.上士別市街地を南方に向かう道路を走ってしばらく行くと,左手に茶色っぽい岩肌の見える山があります.ここが採石場で,花崗岩のすごい露頭があります.この花崗岩は新生代新第三紀中新世のもので,直接年代測定はされていませんが,およそ2000万年前のものと推測されます.この頃,地下の火成活動が発生すると同時に,日本海の形成が始まりました.

 花崗岩の採石場です.作業中の方にはいつもチョロチョロしてご迷惑をおかけしています.一見花崗岩の山ではなく,砂の山のように見えるんですが,れっきとした花崗岩です.花崗岩って?と思われる方もおられると思いますが,岩石の中では最も有名で身近な石材である,「御影石(白御影)」の事です.お墓やビルの壁などによく使われています.
 花崗岩は地下深くでマグマがゆっくり固まる事によって出来た岩石です.この時代,地下深くに火成活動が起き,花崗岩の塊ができたのです.
 露頭に近づいてみました.かなり風化が激しく,ザクザクの状態ですね.花崗岩のような深成岩が風化して出来た砂のことを「真砂(マサ)」と言います.この採石場ではマサを採取しています.グランドにまかれたり,様々な用途に利用されるようです.深成岩の風化は,物理的風化が一般的で,簡単に言うと温度変化が原因です.冷やされたり暖められたりを繰り返すことによって,鉱物が膨張したり収縮したりします.鉱物によってその度合いが違うので,微妙にひずみが出来て岩石が割れてしまうのです.
 ここは花崗岩と,それが風化したマサがいっしょに見られます.花崗岩体の中心部はまだ風化を免れているのです.風化は岩体の表面から起こるためです.今,私は2000万年前の地下深くのマグマを見ているのです.感激! 実は,このマグマの発生は,日高山脈の形成の開始と連動しています.数千万年前,このあたりは日高山脈の一部だったのです....(まだ山脈ではありませんでしたが...)
 採石場のすぐ横の露頭です.これは完全にマサ化しており,砂状です.同じ花崗岩でも,近くの朝日町のものはマサ化していません.不思議ですね.一説では,上士別の花崗岩は氷河期に地表に露出していたもので,寒気にさらされてマサ化したとも言われています.でも,本当のところはよくわかっていません.
 マサにハンマーを突き立ててみました.ザクッと刺さります.この砂が本当にあのガッシリした花崗岩だったとは,とうてい信じられません.自然の力というのはすごいものですね.この坂をよじ登ってみようとしましたが,まるで「アリ地獄」のようで,あんまり登れませんでした.←この写真、○研出版の高校地学の教科書に使われています。
 花崗岩です.白い肌に黒いツブツブがたくさん入っています.写真上部の黒っぽいところは「ホルンフェルス」という岩石で,砂や泥がマグマの熱で変質して硬くなったものです.2000万年前,砂や泥の地層の中にマグマが入り込み,周囲の地層がホルンフェルスになったものでしょう.普通はなかなか見ることのできない状態です.

 今回は花崗岩という,有名ながらあまり普段気にしない岩石が身近なところにあるということを知っていただけたでしょうか.「マサ」は,以外と皆さんの身近なところにあります.当ホームページ本編でもいくつか紹介している部分がありますので,探してみてください.

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過去の露頭探検隊を見る
  第1回 剣淵町刈分川の刈分川層
  第2回 和寒町東和の東和コンプレックス
  第3回 士別市温根別のマムシ沢
  第4回 剣淵町弥栄川の弥栄川層
  第5回 上士別・朝日町の石灰岩
  第6回 士別市温根別のエゾ累層群