第 15 回

 このコーナーでは,士別周辺の露頭をピックアップして,その様子を紹介して,その見どころやエピソードをお伝えします.いろいろな場所が登場しますので,皆さんも地質調査をしているつもりで楽しんで下さい.以前のこのコーナーに登場したものを見たい人は,このページの下の方から入って見て下さい.

 和寒町東町の凝灰岩

 このコーナーの第15弾は,和寒町東町の美深層中の凝灰岩です.美深層は1300万年〜800万年前ぐらいの時代に形成された,主として陸成の火山性堆積物です.安山岩質の溶岩・凝灰岩(火山灰)・河川成の砂泥・火砕流堆積物・土石流堆積物などが見られます.士別付近の地表を最も広く覆っているのがこの美深層です.和寒町東町で高速道路の建設工事が行われた際にちょっとおじゃましてみると,白色の凝灰岩が観察されました.

 工事現場です.なかなかこういう写真は撮れないのでいい記念です.土台をつくっている土砂は風化した美深層です.軟らかい地層なので工事はやりやすい? うわさではこの近辺で「貝」が出たということですが,確認できません.地元の人は「貝塚か?」と言ってたらしいですが,こんな内陸に貝塚はないでしょうから,多分剣淵で発見された貝化石と同じものだと思います.工事が終わってしまったので,もう調べようもありませんが....
 これは白色凝灰岩です.重機で崩したものですね.驚くほどきれいな白色をしていて,素晴らしい岩石だと思います.凝灰岩はもともと火山灰ですから,内部に空隙が多く,水がしみ込んで風化しやすいものです.しかしこの凝灰岩は全く風化していない! とてもきれいで貴重なものなので,士別博物館の岩石展示コーナーに展示しました.
 この凝灰岩には黄鉄鉱という金色の鉱物がたくさん含まれています.白い岩石に細かな金色のラメが入っている感じ.なかなか風格があります.磨くと石材としてけっこういけるかも?

 さて,和寒の凝灰岩でした.今は火山も地震もない安全なこの地域ですが,かつては今の有珠山や登別のあたりのような火山帯だったわけですね.火山が噴火し,溶岩を吹き出して空からは多量の火山灰が降り注いだわけです.火砕流が多くの生物を焼き殺し,土石流が森林をなぎ倒したことでしょう.2000年の有珠山の噴火のすぐ後に見てきましたが,もうメチャクチャでした.この辺もあんな風だったのかな.いや、そんなもんじゃないか・・・

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  第1回 剣淵町刈分川の刈分川層
  第2回 和寒町東和の東和コンプレックス
  第3回 士別市温根別のマムシ沢
  第4回 剣淵町弥栄川の弥栄川層
  第5回 上士別・朝日町の石灰岩
  第6回 士別市温根別のエゾ累層群
  第7回 士別市上士別の花崗岩
  第8回 剣淵町弥栄川の弥栄川緑色岩体(その1)
  第9回 剣淵町弥栄川の弥栄川緑色岩体(その2)
 第10回 上士別の石灰山(その2)
 第11回 朝日町岩尾内湖の頁岩層
 第12回 士別市温根別ダムの蛇紋岩
 第13回 士別市温根別九線川の下部蝦夷層群
 第14回 士別市温根別ダムの下部蝦夷層群