第 17 回

 このコーナーでは,士別周辺の露頭をピックアップして,その様子を紹介して,その見どころやエピソードをお伝えします.いろいろな場所が登場しますので,皆さんも地質調査をしているつもりで楽しんで下さい.以前のこのコーナーに登場したものを見たい人は,このページの下の方から入って見て下さい.

 士別市朝日八線の貝化石(その1)

 このコーナーの第17弾は,朝日八線の奥士別層で発見された貝化石の露頭です.前回紹介した美深層の堆積が始まる直前の1500万年前頃,このあたりは浅い海でした.第四回で紹介した剣淵町の弥栄川層もその頃の地層です.朝日町には似峡層と奥士別層という2つの地層がそれにあたります.士別から岩尾内湖に向かって東進し,朝日町市街地を抜けて少し走ったところの左手に黒っぽい露頭が見えてきます.これが貝化石を産する奥士別層です.

 小さな露頭ですが,偉大な露頭です.普通は河川で削られて残っていないはずのものですから.ふるい地質図では「中生代の地質」になっています.パッとできてすぐに引いていった(と言っても数万年くらいはあったと思いますが)1500万年前の海の地層...なんだかロマンがありますね.士別地域最後の海です.もし今後このあたりが海になるとしたら....地球温暖化ですね. さて,この貴重な露頭でハンマーをふるっているこの女性は誰?? おぉ,力強いですねぇ! 地学の世界,このように女性にもおおいに興味を持って欲しいものです.
 ハンマーの下の白っぽいところが貝化石層です.これはすごい! 朝日町の人達は知っていた人が多いかもしれませんが,この内陸部で1500万年前の貝化石が見つかるということは実は大変なことなんです.かなり海水準が上昇したんでしょうね. この貝化石,えらそうに私が公表していますが,実は士別の鈴木さんというお巡りさんに教えていただいたんです.彼は私の家の玄関においてある化石に興味を示していて,もともと石が大好きだったらしいんです.ありがたいですね.今は転勤して士別にはおられませんが.

 士別市朝日の奥士別層でした.1500万年前の内湾(奥士別湾入部といいます)の貝化石層です.貝がかなり崩れていますので,水流で運ばれたものでしょうが,生息地域からそんなに離れたものではないはずです.この貝の正体は?? その辺の話は「その2」でお話ししましょう.

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過去の露頭探検隊を見る
  第1回 剣淵町刈分川の刈分川層
  第2回 和寒町東和の東和コンプレックス
  第3回 士別市温根別のマムシ沢
  第4回 剣淵町弥栄川の弥栄川層
  第5回 上士別・朝日町の石灰岩
  第6回 士別市温根別のエゾ累層群
  第7回 士別市上士別の花崗岩
  第8回 剣淵町弥栄川の弥栄川緑色岩体(その1)
  第9回 剣淵町弥栄川の弥栄川緑色岩体(その2)
 第10回 上士別の石灰山(その2)
 第11回 朝日町岩尾内湖の頁岩層
 第12回 士別市温根別ダムの蛇紋岩
 第13回 士別市温根別九線川の下部蝦夷層群
 第14回 士別市温根別ダムの下部蝦夷層群
 第15回 和寒町東町の凝灰岩
 第16回 朝日町ケナシ川の似峡層