第 23 回

 このコーナーでは,士別周辺の露頭をピックアップして,その様子を紹介して,その見どころやエピソードをお伝えします.いろいろな場所が登場しますので,皆さんも地質調査をしているつもりで楽しんで下さい.以前のこのコーナーに登場したものを見たい人は,このページの下の方から入って見て下さい.

 和寒町東丘の安山岩

 このコーナーの第23弾は,和寒町東丘の安山岩の大きな露頭です.和寒町市街地を南に抜けた国道沿いに南雲牧場があります.その手前には剣淵や上士別に続く山道があり,ここから山に入ってしばらく行くと左手に安山岩の露頭があります.このあたりでは珍しい大きな露頭で,V字型に大きく切り開かれた見応えのあるものです.

 こんな露頭です.なかなか迫力がありますね.ロッククライミングをしたくなりますが,崩れやすいのでダメですよ.あまり詳しく観察はしていませんが,ほとんどが安山岩で,一部凝灰岩もあるようです.和寒は「こどもの国」のある三笠山をはじめとして安山岩が随所に見られ,採石場もありますね.これらはいずれも「美深層」という,1400万〜900万年前の火山活動によってできた地層です.以前紹介した和寒町東町の凝灰岩もそのメンバーです.当時このあたりは爆発的な火山活動が起きており,いたる所に溶岩が流れだし,火山灰が降り積もっていました.もちろん温泉もたくさんあったでしょう.
 安山岩の「節理」が観察されます.溶岩が冷え固まるときに,熱が逃げる方向にできたひび割れのことです.この露頭全体に節理が見られるということは,これがもともと一つの噴火で流れ出た溶岩であるということです.10メートル以上もあるこの露頭が一回の噴火で噴出した溶岩なのですから,さぞかしスゴイ噴火だったのでしょうが,この程度の溶岩は和寒だけでなく,道北地方全体にいくらでも存在します.まだ人類が地球に現れる前の時代のことですが,その頃の生物達はさぞかしひどい目にあったことでしょうね.同情します.

 和寒町の安山岩でした.1400万〜900万年前,このあたりが大規模な火山地帯だった証拠です.有珠山や駒ヶ岳程度の噴火で驚いてはられないわけですね.500万年ほどの期間,火山活動が続いた後はピタリとおさまり,現在のような地震も噴火もない落ち着いた環境になったようです.良かったですね (^_^;)

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過去の露頭探検隊を見る
  第1回 剣淵町刈分川の刈分川層
  第2回 和寒町東和の東和コンプレックス
  第3回 士別市温根別のマムシ沢
  第4回 剣淵町弥栄川の弥栄川層
  第5回 上士別・朝日町の石灰岩
  第6回 士別市温根別のエゾ累層群
  第7回 士別市上士別の花崗岩
  第8回 剣淵町弥栄川の弥栄川緑色岩体(その1)
  第9回 剣淵町弥栄川の弥栄川緑色岩体(その2)
 第10回 上士別の石灰山(その2)
 第11回 朝日町岩尾内湖の頁岩層
 第12回 士別市温根別ダムの蛇紋岩
 第13回 士別市温根別九線川の下部蝦夷層群
 第14回 士別市温根別ダムの下部蝦夷層群
 第15回 和寒町東町の凝灰岩
 第16回 朝日町ケナシ川の似峡層
 第17回 朝日町八線の貝化石
 第18回 朝日町八線の貝化石(その2)
 第19回 朝日町八線の貝化石(その3)
 第20回 朝日町糸魚小学校の所蔵資料
 第21回 士別市温根別中線川の中部蝦夷層群(その1)
 第22回 士別市温根別中線川の中部蝦夷層群(その2)