第 32 回

 このコーナーでは,士別周辺の露頭をピックアップして,その様子を紹介して,その見どころやエピソードをお伝えします.いろいろな場所が登場しますので,皆さんも地質調査をしているつもりで楽しんで下さい.以前のこのコーナーに登場したものを見たい人は,このページの下の方から入って見て下さい.

比布町北3線のエゾ累層群(その1) 

 このコーナーの第32弾は,旭川市北方の比布町の北3線にある,大きな採石場の露頭です。場所は離れていますが,士別近辺で見られる地質との関連が興味深く,今回取り上げることにしました。士別からは国道40号線を旭川方面に走り,比布町市街地に入る手前の道路を右折します。右手に高速道路を見ながら直進して突き当たったところに,大きな露頭があります。ここでは,中生代白亜紀後期のエゾ層群が観察されます。

 あまりにも大きくて1枚の写真には収まりきらないほどです。採石している岩石は泥岩のようです。何に使っているんでしょうか。コンクリートの骨材かな?
 ここでは,露頭全体が黒っぽく見えます。深い海に堆積した黒色泥岩です。ときどき金色に輝く黄鉄鉱や,真っ白い方解石の結晶が見られます。こうした岩石が露頭いっぱいに広がっています。
 近づいてみました。露頭の一番手前の西側です。この部分は砂岩が多い場所です。茶色っぽい(薄い色)部分が細流砂岩,黒っぽい部分が泥岩です。これとそっくりな露頭を以前ご紹介しましたが,わかりますか?
 正解は,「剣淵町の刈分川層」でした。まったくそっくりです。これは,(台風などによる)大洪水が起きたとき,普段土砂などが流れ込んでは来ないような場所に,「混濁流」として土砂が流れ込んで堆積したもので,「タービダイト」といいます。いろいろなものが一緒に海底の斜面を流れ下り,下についたら重たいもの(砂)が先に,軽いもの(泥)が後に堆積し,そうしたことが繰り返されてこんな縞模様をつくるんです。とてもきれいな地層ですね。
 剣淵町と時代の同じ海溝の堆積物ですから,比布町と剣淵町は白亜紀後期に海溝の底でつながっていたということになりますね。

 比布町北3線のエゾ層群でした。車があれば観察しやすいポイントですが,採石場ですので平日の観察はご遠慮ください。また,露頭を崩す行為も慎んでほしいですね。

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過去の露頭探検隊を見る
  第1回 剣淵町刈分川の刈分川層
  第2回 和寒町東和の東和コンプレックス
  第3回 士別市温根別のマムシ沢
  第4回 剣淵町弥栄川の弥栄川層
  第5回 上士別・朝日町の石灰岩
  第6回 士別市温根別のエゾ累層群
  第7回 士別市上士別の花崗岩
  第8回 剣淵町弥栄川の弥栄川緑色岩体(その1)
  第9回 剣淵町弥栄川の弥栄川緑色岩体(その2)
 第10回 上士別の石灰山(その2)
 第11回 朝日町岩尾内湖の頁岩層
 第12回 士別市温根別ダムの蛇紋岩
 第13回 士別市温根別九線川の下部蝦夷層群
 第14回 士別市温根別ダムの下部蝦夷層群
 第15回 和寒町東町の凝灰岩
 第16回 朝日町ケナシ川の似峡層
 第17回 朝日町八線の貝化石
 第18回 朝日町八線の貝化石(その2)
 第19回 朝日町八線の貝化石(その3)
 第20回 朝日町糸魚小学校の所蔵資料
 第21回 士別市温根別中線川の中部蝦夷層群(その1)
 第22回 士別市温根別中線川の中部蝦夷層群(その2)
 第23回 和寒町東丘の美深層
 第24回 剣淵町12線の多寄層(その1)
 第25回 剣淵町12線の多寄層(その2)
 第26回 士別市武徳の緑色岩
 第27回 士別市温根別の角閃岩(その1)
 第28回 士別市温根別の角閃岩(その2)
 第29回 朝日町北線の奥士別層(その1)
 第30回 朝日町北線の奥士別層(その2)
 第31回 風連町東生の下川層群