第 33 回

 このコーナーでは,士別周辺の露頭をピックアップして,その様子を紹介して,その見どころやエピソードをお伝えします.いろいろな場所が登場しますので,皆さんも地質調査をしているつもりで楽しんで下さい.以前のこのコーナーに登場したものを見たい人は,このページの下の方から入って見て下さい.

比布町北3線のエゾ累層群(その2) 

 このコーナーの第33弾は,前回に引き続き,比布町北3線の採石場の,中生代白亜紀後期のエゾ層群の露頭です。海溝斜面の「タービダイト」というものでしたね。今日はもう少し詳しく見てみましょう。

 これは露頭の南側です。真っ黒な地層が見えており,真っ平らになっています。これは,黒色泥岩の地層で,地層の堆積面(層理面といいます)にそって割れているので,平らになっています。均質な,とてもきれいな泥岩です。深海底は酸素がほとんどないため,鉄分は赤さびにはならず,黒っぽくなっています。こういう環境を「還元性の環境」といいます。
 近づいてみました。ところどころ,こんな風に波打っているところがあります。これはリップルマークといって,泥が堆積するとき,または堆積した後の水の流れによって表面にできた波の模様です。海底の砂や砂丘の表面をイメージしてみて下さい。これを調べることで,昔の海底の水の流れがわかったりします。
 さらに,こんなものまで見つかりました! 太いまっすぐの模様と,グニャグニャとした不規則な模様が見られます。このグニャグニャは生痕化石といって,生物が泥の上をはい回った跡です。いったいどんな生物が,中生代のこの海底をはい回っていたのでしょうか。太い棒状のものは,物体が海底すれすれを飛んでいったときにできるひっかき傷みたいなものらしいです。

 比布町北3線のエゾ層群でした。実はここの地層,位置的にはエゾ層群分布域の最も東側にあります。海溝ギリギリということですね。エゾ層群は,海溝の上の,陸側に堆積している地層なのです。このことは剣淵町の刈分川層にもいえることなんですが,比布のエゾ層群は,島弧の東側の堆積盆から土砂があふれ出して,海溝に堆積したものと考えています。ちょっとイメージしにくいでしょうか。

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過去の露頭探検隊を見る
  第1回 剣淵町刈分川の刈分川層
  第2回 和寒町東和の東和コンプレックス
  第3回 士別市温根別のマムシ沢
  第4回 剣淵町弥栄川の弥栄川層
  第5回 上士別・朝日町の石灰岩
  第6回 士別市温根別のエゾ累層群
  第7回 士別市上士別の花崗岩
  第8回 剣淵町弥栄川の弥栄川緑色岩体(その1)
  第9回 剣淵町弥栄川の弥栄川緑色岩体(その2)
 第10回 上士別の石灰山(その2)
 第11回 朝日町岩尾内湖の頁岩層
 第12回 士別市温根別ダムの蛇紋岩
 第13回 士別市温根別九線川の下部蝦夷層群
 第14回 士別市温根別ダムの下部蝦夷層群
 第15回 和寒町東町の凝灰岩
 第16回 朝日町ケナシ川の似峡層
 第17回 朝日町八線の貝化石
 第18回 朝日町八線の貝化石(その2)
 第19回 朝日町八線の貝化石(その3)
 第20回 朝日町糸魚小学校の所蔵資料
 第21回 士別市温根別中線川の中部蝦夷層群(その1)
 第22回 士別市温根別中線川の中部蝦夷層群(その2)
 第23回 和寒町東丘の美深層
 第24回 剣淵町12線の多寄層(その1)
 第25回 剣淵町12線の多寄層(その2)
 第26回 士別市武徳の緑色岩
 第27回 士別市温根別の角閃岩(その1)
 第28回 士別市温根別の角閃岩(その2)
 第29回 朝日町北線の奥士別層(その1)
 第30回 朝日町北線の奥士別層(その2)
 第31回 風連町東生の下川層群
 第32回 比布町のエゾ累層群(その1)