第 42 回
剣淵町西原の美深層(その1)

 このコーナーでは,士別周辺の露頭をピックアップして,その様子を紹介して,その見どころやエピソードをお伝えします.いろいろな場所が登場しますので,皆さんも地質調査をしているつもりで楽しんで下さい.以前のこのコーナーに登場したものを見たい人は,このページの下の方から入って見て下さい.


 もう何度も取り上げてきた「美深層」ですが,今回は剣淵町西部の西原の丘陵地に見られる,美深層としては有名な露頭を紹介します。「有名」というのはどういう事かな??
 これがその露頭です。旭川西高校の平松先生(現 福山市立大学)に平成9年に案内していただいたときの写真です。赤い泥岩の中に,丸い大きな安山岩の礫がたくさん入っています。この地域としては一般的な美深層の顔をしています。「泥岩の中に大きな丸い礫」というのは,土石流堆積物と考えるのが普通です。土石流については第31回の風連町の下川層群で説明しましたね。
 火山性の土石流は,火山が噴火して火山灰や溶岩がある場所で多量の雨が降ると,それらがいっしょにドドっとすごい勢いで斜面を流れ下るものです。泥水のように密度の高い流体が斜面を高速に下ってくると,その内部には激しい渦流ができて,1m以上もの大きな岩石も運ぶ力を持ちます。この露頭に見られる大きな安山岩はそうして運ばれたものでしょう。
 これはこの露頭で一番大きな安山岩の礫です。かなり丸くなっているのは,土石流として運搬されているときにお互いに激しくぶつかり合って丸くなっていったものと思われます。ちなみにこの岩石をハンマーで割ろうとしても,ものすごく硬くて割れません。それがこんなに丸くなるのですから,土石流でぶつかった衝撃は本当に大きなものなのでしょうね。
 さて,この露頭が「有名」である理由は,この安山岩の年代が測定されているからです。K−Ar(カリウムアルゴン)法という方法で測定され,約820万年前とされています。この年代値はすべての美深層の中で最も新しい年代です。美深層をつくった火山活動末期の年代と考えられます。

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■過去の露頭探検隊を見る
第 1回 剣淵町刈分川の刈分川層
第 2回 和寒町東和の東和コンプレックス
第 3回 士別市温根別のマムシ沢
第 4回 剣淵町弥栄川の弥栄川層
第 5回 上士別・朝日町の石灰岩
第 6回 士別市温根別のエゾ累層群
第 7回 士別市上士別の花崗岩
第 8回 剣淵町弥栄川の弥栄川緑色岩体(その1)
第 9回 剣淵町弥栄川の弥栄川緑色岩体(その2)
第10回 上士別の石灰山(その2)
第11回 朝日町岩尾内湖の頁岩層
第12回 士別市温根別ダムの蛇紋岩
第13回 士別市温根別九線川の下部蝦夷層群
第14回 士別市温根別ダムの下部蝦夷層群
第15回 和寒町東町の凝灰岩
第16回 朝日町ケナシ川の似峡層
第17回 朝日町八線の貝化石
第18回 朝日町八線の貝化石(その2)
第19回 朝日町八線の貝化石(その3)
第20回 朝日町糸魚小学校の所蔵資料
第21回 士別市温根別中線川の中部蝦夷層群(その1)
第22回 士別市温根別中線川の中部蝦夷層群(その2)
第23回 和寒町東丘の美深層
第24回 剣淵町12線の多寄層(その1)
第25回 剣淵町12線の多寄層(その2)
第26回 士別市武徳の緑色岩
第27回 士別市温根別の角閃岩(その1)
第28回 士別市温根別の角閃岩(その2)
第29回 朝日町北線の奥士別層(その1)
第30回 朝日町北線の奥士別層(その2)
第31回 風連町東生の下川層群
第32回 比布町のエゾ累層群(その1)
第33回 比布町のエゾ累層群(その2)
第34回 比布町北5線の枕状溶岩
第35回 士別市九十九山の川西層
第36回 朝日町岩尾内の柵留林道の斑れい岩(その1)
第37回 朝日町岩尾内の柵留林道の斑れい岩(その2)
第38回 朝日町岩尾内の柵留林道の斑れい岩(その3)
第39回 朝日町岩尾内の柵留林道
第40回 美深町小車の貝化石(その1)
第41回 美深町小車の貝化石(その2)