このコーナーでは,士別周辺の露頭をピックアップして,その様子を紹介して,その見どころやエピソードをお伝えします.いろいろな場所が登場しますので,皆さんも地質調査をしているつもりで楽しんで下さい.以前のこのコーナーに登場したものを見たい人は,このページの下の方から入って見て下さい. |
このコーナーの第28弾は,前回に引き続き,士別市温根別五線川林道の片状角閃岩です.五線川林道は温根別ダムを対岸に渡り,左側に続く林道です.角閃岩とは,角閃石という鉱物を中心とした岩石のことですが,前回お話した通り,かつては「中生代の海洋プレート」だったものです.このルートでは多種多彩な角閃岩が観察され,士別の地質と調べていく中で最も重要な部分でもあります. |
これは,角閃岩の中に細長く入っている粗粒な(ツブが大きいということ)斑れい岩です.角閃岩は,玄武岩や斑れい岩が編成されてできる岩石であり,それらの岩石がゴチャゴチャになって観察されることが多いです.例えば斑れい岩が角閃岩に変わるとき,その一部が変化しなかった場合などです.すると,全体は角閃岩でありながら,部分的に斑れい岩だったり玄武岩だったりします.また,角閃岩の中に,後で玄武岩質の溶岩が入り込んできて,ゆっくり固まって溶岩の部分だけが斑れい岩になってしまうモノもあります. ヤヤコシイ話をしてしまいました.さらに,角閃石というのはそれがつくられるときの温度や圧力によって,様々な種類の角閃石になりますので,実際に調べてみるとますます手強い岩石なわけです. |
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そんなにヤヤコシイ岩石に挑戦して,研究している人もいます.最近一番大きな成果をあげたのが,士別博物館特別学芸員の石井彰洋さんです.左の写真は石井さんが五線川の角閃岩を薄片にして,偏光顕微鏡を使って撮影したものです.細長いのが全部角閃石です.石井さんは,北海道大学の渡辺暉夫先生と協力して,温根別の角閃岩のつくられた環境について研究され,2篇の論文を発表しました.近年のこの地域の論文としては最も優れたものです.そこでは「リヒター閃石岩」という珍しい岩石の成因等についても報告されています.残念ながら渡辺先生は突然ご逝去されてしまいましたが... |
五線川の角閃岩でした.難解な内容になってしまい,申し訳ございません.とにかく詳しく調べるべき,大変なシロモノが温根別にあるのだということがわかっていただければというところです.ここ数年,ダムに入る道が崖崩れのため封鎖されていることが多く,研究に支障が出ています.何とか夏だけでも通れると良いのですが... |
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