このコーナーでは,士別周辺の露頭をピックアップして,その様子を紹介して,その見どころやエピソードをお伝えします.いろいろな場所が登場しますので,皆さんも地質調査をしているつもりで楽しんで下さい.以前のこのコーナーに登場したものを見たい人は,このページの下の方から入って見て下さい. |
このコーナーの第31弾は,名寄市風連町東風連の下川層群です。士別市の東側から下川町方面に向かい,風連町日進の市街地を抜けて下川町との境界近くまで行ったところに,ちょっとした露頭があります。風連はなだらかな地形が多く,露頭の非常に少ない街なので,この露頭は貴重です。さて,そこにあったものは? |
白っぽい砂や泥の中に,いろいろな大きさの角張った礫が入っていました。礫はほとんどが溶岩の固まった安山岩と,軽石でした。これは,士別周辺地域では最もよく見かける,「美深層」にそっくりです。下川近辺の美深層は,下川層群と呼ばれています。美深層は以前和寒のいくつかの露頭を紹介しました。1400万年前〜900万年前の,火山性の地層ですね。 風連のこの地層は,火山の噴火によって,火山灰が堆積したあと,大雨によって泥や岩石が一気に斜面を流れ下ったもので,「土石流堆積物」といいます。泥の流れは密度が高く,粘性もあり,流れ下る際に内部に強い渦ができ,その力で1m以上の岩石を持ち上げてしまうこともあります。 普通の堆積物は,重たい岩石がさきに堆積して,次に砂,そして泥,というように大きい順番に堆積していくものですが(そういう構造を「上方細粒化」といいます),土石流堆積物にはそういう構造が見られません。ドドッと流れてきて,ドサッとそのまま堆積する。そんな感じです。土石流は一つの村を一気に破壊してしまうこともあるそうです。すごいですね。 |
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よく見てみましょう。いろいろな色の岩石が入っています。色が違うので,さぞかし多くの種類の岩石があるのだろうと思ってよく見ると,ほとんど全部が安山岩なんですね。安山岩というのは,色が薄めで,中に大きめの結晶(鉱物)がポツポツと入っている岩石です。陸上の火山から石英の多い,粘りけのある溶岩が噴出してできた岩石です。中学校の理科で習う岩石ですね。 安山岩の色が違うのにはいろんな原因があると思います。成分の違い,冷やされ方の違い,噴出した後に加熱されたかどうか,風化の度合い,などです。数百万年の間,このあたりは非常に活動的な火山地帯でしたので,ここの地層中の安山岩の礫も,様々な時代のものがゴチャゴチャに含まれている可能性があります。 |
風連町の下川層群でした。あまり見やすい露頭ではありませんが,過去の土石流を想像してみるのも面白いかも。 |
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