第 34 回

 このコーナーでは,士別周辺の露頭をピックアップして,その様子を紹介して,その見どころやエピソードをお伝えします.いろいろな場所が登場しますので,皆さんも地質調査をしているつもりで楽しんで下さい.以前のこのコーナーに登場したものを見たい人は,このページの下の方から入って見て下さい.

比布町北5線の枕状溶岩 

 今回ご紹介するのは,比布町北5線のとても小さな露頭です。日本地質学会北海道支部での巡検で観察しました。さて、枕状溶岩というのはいったい何だったでしょうか?

 こんもりとした赤っぽい岩石の塊ですね。普通は誰も気にとめないのではないでしょうか。でも、この岩石の塊、スゴイものだったんですね!
 まず、この岩石の正体は「玄武岩」です。海の火山の溶岩と考えられます。時代は中生代白亜紀、恐竜やアンモナイトの時代です。玄武岩とはいいましたが、やや変質しており、「緑色岩」と呼ばれます。「ん?・・・赤いのに緑色岩?」と思われるかもしれませんが、そうなんですよ。典型的なものは緑色をしているので緑色岩と呼ばれていますが、中にはこうした赤っぽいものもある。でも名前は緑色岩。
 では次に、「枕状溶岩」ですが、この言葉は以前も出てきました。水中に粘りけの少ない溶岩が流れ出すと、チューブ状に流れては固まり、また流れては固まりということを繰り返して、チューブがいくつも重なったような溶岩になります。その断面が枕を重ねたように見えるのでこうよばれています。要するに水中に溶岩が流れた証拠というわけですね。写真で指さしている部分が特に枕のように見えます(北大のK先生)。
 近づいてみました。枕はドローッと流れていって、先にできていた枕の上に重なり、隙間にダラッとたれさがってきます。その様子が露頭でも観察され、どちらが上かがわかります。写真では左下の方がもともと上だったことになります。
 また、溶岩にはかなり多くの小さな穴が開いていました。これは溶岩が噴出したときに、内部のガスが抜けたことを示していますが、もし深海底だった場合はその水圧で発泡せず、穴はできないといわれています。つまり、この溶岩は浅い海で流れたということになります。ハワイをイメージするといいですね!
 写真中央に2つのはっきりとした枕が見えます。こんな風に中生代の枕状溶岩が保存されているのは珍しいことです。以前ご紹介した剣淵町八線の枕状溶岩もすばらしいものでしたが、残念ながら高速道路ができて露頭がなくなってしまいました。比布のこの枕状溶岩の露頭も、剣淵のものと同じ時代のものと考えられ、中生代白亜紀前期の海洋島でしょう。こうしたものがほとんど変形を受けずに残っていること自体、北大K先生の表現によれば「奇跡的な露頭」であるといえます。

 比布町北5線の枕状溶岩でした。前回ご紹介した北3線砂岩泥岩互層と同じく、「イドンナップ帯」と呼ばれるゾーンにあります。海溝の部分ということですね。かつてのハワイのような海洋島が海洋プレートの動きとともに移動し、海溝に沈み込みきれずに、海溝の壁に付加したものです。よくぞ残っていてくれました!

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 第27回 士別市温根別の角閃岩(その1)
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