第 37 回

 このコーナーでは,士別周辺の露頭をピックアップして,その様子を紹介して,その見どころやエピソードをお伝えします.いろいろな場所が登場しますので,皆さんも地質調査をしているつもりで楽しんで下さい.以前のこのコーナーに登場したものを見たい人は,このページの下の方から入って見て下さい.

士別市朝日町岩尾内、柵留林道の斑れい岩(その2) 

 今回は前回に引き続き、朝日町岩尾内の柵留(サックル)林道付近をご紹介します。前回はサックル林道の斑れい岩はその起源として二種類が考えられるという話でしたね。

 林道に入ってしばらく行くと、行者の滝というところがあります。滝・・・・にはなっていませんでした。小さな看板も折れて転がっていましたので、立て掛けてきました。ここに小さな露頭がありますが、これがなんと「トロクトライト」という珍しい斑れい岩の一種なのです。見た目は「ただの石」・・・という感じで、普通は誰も気にする人はいないでしょう。でも、北大や新潟大の先生方が調べていて、昔からとても有名な岩石なのです。とても硬い岩石なので、普通の釘打ちハンマーでは割れないと思いますよ。鉱物がびっしりと緻密に詰まった黒っぽい岩石です。
 これは、行者の滝のトロクトライトの薄片写真です。石井彰洋さん(特別学芸員)が作成して撮影してくれました。トロクトライトという斑れい岩は、主にかんらん石と斜長石でできています。普通の斑れい岩は、その他に輝石や角閃石なども含まれています。トロクトライトは、地下の大変深いところ(マントルに近い所)で岩石の一部が熔けて、そのマグマからかんらん石と斜長石が晶出してできた岩石と考えられています.
 写真ではわかりにくいですが、丸くてヒビが入ったように見える鉱物がかんらん石です。かんらん石というのは宝石のペリドットのことです。あの薄いグリーンの石ですね。鉱物名はオリビンといい、植物のオリーブに由来します。以前日本人がオリーブのことをカンラン科の植物と考えていたため、かんらん石と名付けられたわけですが、本当はオリーブはモクセイ科の植物でした。でも鉱物の名前までは変わらなかったので、今でも「かんらん石」と呼ばれています。

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  第1回 剣淵町刈分川の刈分川層 第31回 風連町東生の下川層群
  第2回 和寒町東和の東和コンプレックス 第32回 比布町のエゾ累層群(その1)
  第3回 士別市温根別のマムシ沢 第33回 比布町のエゾ累層群(その2)
  第4回 剣淵町弥栄川の弥栄川層 第34回 比布町北5線の枕状溶岩
  第5回 上士別・朝日町の石灰岩 第35回 士別市九十九山の川西層
  第6回 士別市温根別のエゾ累層群 第36回 朝日町岩尾内の柵留林道の斑れい岩(その1)
  第7回 士別市上士別の花崗岩
  第8回 剣淵町弥栄川の弥栄川緑色岩体(その1)
  第9回 剣淵町弥栄川の弥栄川緑色岩体(その2)
 第10回 上士別の石灰山(その2)
 第11回 朝日町岩尾内湖の頁岩層
 第12回 士別市温根別ダムの蛇紋岩
 第13回 士別市温根別九線川の下部蝦夷層群
 第14回 士別市温根別ダムの下部蝦夷層群
 第15回 和寒町東町の凝灰岩
 第16回 朝日町ケナシ川の似峡層
 第17回 朝日町八線の貝化石
 第18回 朝日町八線の貝化石(その2)
 第19回 朝日町八線の貝化石(その3)
 第20回 朝日町糸魚小学校の所蔵資料
 第21回 士別市温根別中線川の中部蝦夷層群(その1)
 第22回 士別市温根別中線川の中部蝦夷層群(その2)
 第23回 和寒町東丘の美深層
 第24回 剣淵町12線の多寄層(その1)
 第25回 剣淵町12線の多寄層(その2)
 第26回 士別市武徳の緑色岩
 第27回 士別市温根別の角閃岩(その1)
 第28回 士別市温根別の角閃岩(その2)
 第29回 朝日町北線の奥士別層(その1)
 第30回 朝日町北線の奥士別層(その2)