もう何度も取り上げてきた「美深層」ですが,今回は剣淵町西部の西原の丘陵地に見られる,美深層としては有名な露頭を紹介します。「有名」というのはどういう事かな?? |
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これがその露頭です。旭川西高校の平松先生(現 福山市立大学)に平成9年に案内していただいたときの写真です。赤い泥岩の中に,丸い大きな安山岩の礫がたくさん入っています。この地域としては一般的な美深層の顔をしています。「泥岩の中に大きな丸い礫」というのは,土石流堆積物と考えるのが普通です。土石流については第31回の風連町の下川層群で説明しましたね。
火山性の土石流は,火山が噴火して火山灰や溶岩がある場所で多量の雨が降ると,それらがいっしょにドドっとすごい勢いで斜面を流れ下るものです。泥水のように密度の高い流体が斜面を高速に下ってくると,その内部には激しい渦流ができて,1m以上もの大きな岩石も運ぶ力を持ちます。この露頭に見られる大きな安山岩はそうして運ばれたものでしょう。 |
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これはこの露頭で一番大きな安山岩の礫です。かなり丸くなっているのは,土石流として運搬されているときにお互いに激しくぶつかり合って丸くなっていったものと思われます。ちなみにこの岩石をハンマーで割ろうとしても,ものすごく硬くて割れません。それがこんなに丸くなるのですから,土石流でぶつかった衝撃は本当に大きなものなのでしょうね。
さて,この露頭が「有名」である理由は,この安山岩の年代が測定されているからです。K−Ar(カリウムアルゴン)法という方法で測定され,約820万年前とされています。この年代値はすべての美深層の中で最も新しい年代です。美深層をつくった火山活動末期の年代と考えられます。 |