第 43 回
剣淵町西原の美深層(その2)

 このコーナーでは,士別周辺の露頭をピックアップして,その様子を紹介して,その見どころやエピソードをお伝えします.いろいろな場所が登場しますので,皆さんも地質調査をしているつもりで楽しんで下さい.以前のこのコーナーに登場したものを見たい人は,このページの下の方から入って見て下さい.


 今回は,前回に引き続いて剣淵町西部の西原の丘陵地に見られる美深層の露頭を紹介します。この露頭は820万年前の火山性の土石流堆積物であるという話でしたね。
 露頭を横から見てみましょう。急斜面から突き出している礫の巨大さがわかりますね。後ろには剣淵町ののどかな田園風景が広がっていますが,数百万年前の火山性土石流が流れたときはどんな風景が広がっていたのでしょうか。
 さて,美深層の泥は赤い色をしているのが特徴だという話をしましたが,それはなぜなのでしょうか。いくつかの説があるようなのですが,火山性の鉄分を多く含んだ泥が,酸化によって赤さびとなってこうした色になる,というのが一般的な話ですが,泥の元になった安山岩が溶岩として噴出するときに酸素に多量に接することで「赤い安山岩」ができる,という事もあるそうです。先日長崎県の雲仙普賢岳に行ってきましたが,そこの赤色と灰色の2種類の安山岩質流紋岩(デイサイト)の成因について,そうした説明がなされていました。
 これは露頭の中にある「タマネギ状風化(オニオンクラック)」と呼ばれる構造です。砂岩や泥岩などの地層が地表で乾燥して四角形にひび割れた後,雨水などがしみこむことによってできるものです。四角形の外側から水が浸透してきて急激に堆積が増えパリパリはがれるように割れていくため,タマネギのように見えます。
 これは実験でつくったオニオンクラックです。剣淵町弥栄川流域で採取した泥岩(粘土に近い)を水で練ってダンゴにして乾燥させ,タライに水を入れておいて中に放り込んだものです。「シュー・・・パチッパチッ」と音を立てながら泡を出し,次第に外側からはがれ落ちていきます。特殊な風化の様式なので教科書とかには出ていないものですが,堆積岩の露頭を観察すると結構見かけるものなので,こんな実験を授業でやってみるのもいいですね。理科の先生方,ぜひやってみて下さい。

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■過去の露頭探検隊を見る
第 1回 剣淵町刈分川の刈分川層
第 2回 和寒町東和の東和コンプレックス
第 3回 士別市温根別のマムシ沢
第 4回 剣淵町弥栄川の弥栄川層
第 5回 上士別・朝日町の石灰岩
第 6回 士別市温根別のエゾ累層群
第 7回 士別市上士別の花崗岩
第 8回 剣淵町弥栄川の弥栄川緑色岩体(その1)
第 9回 剣淵町弥栄川の弥栄川緑色岩体(その2)
第10回 上士別の石灰山(その2)
第11回 朝日町岩尾内湖の頁岩層
第12回 士別市温根別ダムの蛇紋岩
第13回 士別市温根別九線川の下部蝦夷層群
第14回 士別市温根別ダムの下部蝦夷層群
第15回 和寒町東町の凝灰岩
第16回 朝日町ケナシ川の似峡層
第17回 朝日町八線の貝化石
第18回 朝日町八線の貝化石(その2)
第19回 朝日町八線の貝化石(その3)
第20回 朝日町糸魚小学校の所蔵資料
第21回 士別市温根別中線川の中部蝦夷層群(その1)
第22回 士別市温根別中線川の中部蝦夷層群(その2)
第23回 和寒町東丘の美深層
第24回 剣淵町12線の多寄層(その1)
第25回 剣淵町12線の多寄層(その2)
第26回 士別市武徳の緑色岩
第27回 士別市温根別の角閃岩(その1)
第28回 士別市温根別の角閃岩(その2)
第29回 朝日町北線の奥士別層(その1)
第30回 朝日町北線の奥士別層(その2)
第31回 風連町東生の下川層群
第32回 比布町のエゾ累層群(その1)
第33回 比布町のエゾ累層群(その2)
第34回 比布町北5線の枕状溶岩
第35回 士別市九十九山の川西層
第36回 朝日町岩尾内の柵留林道の斑れい岩(その1)
第37回 朝日町岩尾内の柵留林道の斑れい岩(その2)
第38回 朝日町岩尾内の柵留林道の斑れい岩(その3)
第39回 朝日町岩尾内の柵留林道
第40回 美深町小車の貝化石(その1)
第41回 美深町小車の貝化石(その2)
第42回 剣淵町西原の美深層(その1)