第 48 回
下川町パンケ川の玄武岩(その2)

 このコーナーでは,士別周辺の露頭をピックアップして,その様子を紹介して,その見どころやエピソードをお伝えします.いろいろな場所が登場しますので,皆さんも地質調査をしているつもりで楽しんで下さい.以前のこのコーナーに登場したものを見たい人は,このページの下の方から入って見て下さい.

 下川町の玄武岩露頭の続きです。1500万年前の玄武岩、今回はその正体に迫ってみましょう。
 この露頭には、玄武岩の溶岩だけがあるわけではありません。写真は露頭の下の方を撮影したものですが、写真の上半分は玄武岩の溶岩、下半分は玄武岩の破片がたくさん入った「凝灰岩」です。凝灰岩というのは火山灰の固まった岩石のことです。前回、浅い海底の火山活動というお話をしましたが、海底火山の噴火は太平洋の鳥島や明神礁などで見られるように、激しい熱水や火山灰を吹き出します。ここの1500万年前の噴火もそのようなものだったのでしょう。溶岩と火山灰が交互に堆積しています。火山灰の中には水中で急冷して破壊された溶岩の破片が入っているわけです。このような地層を「ハイアロクラスタイト」といいます。海底の火山活動の証拠です。
 玄武岩をよく見ると、写真のように丸い穴が見つかることがあります。場所によっては穴だらけの場所もあります。この穴はどのようにしてできたのでしょうか。
 実は、「火山岩」と呼ばれる溶岩の冷えた岩石は、基本的に穴だらけなのです。溶岩は内部に水蒸気や二酸化炭素をはじめとした多量のガスを持っていて、地表に噴出したときに外に出てきます。穴は気泡なのですね。サイダーやビールの栓を抜くと泡がシュワッと出てきますが、溶岩もこれと同じで、圧力の高い地下に閉じこめられていたときは発砲していなかったものが、圧力の低い地表に噴出して、一気に発砲したものです。玄武岩の溶岩は、深海底や地中で噴出するケースもありますが、そのときは周囲の圧力が高いので、発砲はわずかです。下川町の玄武岩はこんなに発砲していますので、かなり浅いところと推定されています。
 これは下川町の玄武岩の薄片を偏光顕微鏡で観察したものです(撮影:士別市立博物館特別学芸員 石井彰洋氏)。大小さまざまな斜長石が見られます。細長くて直線的な縞模様の入っている鉱物が斜長石です。溶岩には一般的に見られる鉱物の石英があまり入っていないのが玄武岩の特徴です。
 あまり目にすることのない玄武岩、岩石の勉強するのに、ちょっと見に行ってみてはいかがでしょうか。

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■過去の露頭探検隊を見る
第 1回 剣淵町刈分川の刈分川層
第 2回 和寒町東和の東和コンプレックス
第 3回 士別市温根別のマムシ沢
第 4回 剣淵町弥栄川の弥栄川層
第 5回 上士別・朝日町の石灰岩
第 6回 士別市温根別のエゾ累層群
第 7回 士別市上士別の花崗岩
第 8回 剣淵町弥栄川の弥栄川緑色岩体(その1)
第 9回 剣淵町弥栄川の弥栄川緑色岩体(その2)
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第11回 朝日町岩尾内湖の頁岩層
第12回 士別市温根別ダムの蛇紋岩
第13回 士別市温根別九線川の下部蝦夷層群
第14回 士別市温根別ダムの下部蝦夷層群
第15回 和寒町東町の凝灰岩
第16回 朝日町ケナシ川の似峡層
第17回 朝日町八線の貝化石
第18回 朝日町八線の貝化石(その2)
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第20回 朝日町糸魚小学校の所蔵資料
第21回 士別市温根別中線川の中部蝦夷層群(その1)
第22回 士別市温根別中線川の中部蝦夷層群(その2)
第23回 和寒町東丘の美深層
第24回 剣淵町12線の多寄層(その1)
第25回 剣淵町12線の多寄層(その2)
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第27回 士別市温根別の角閃岩(その1)
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第29回 朝日町北線の奥士別層(その1)
第30回 朝日町北線の奥士別層(その2)
第31回 風連町東生の下川層群
第32回 比布町のエゾ累層群(その1)
第33回 比布町のエゾ累層群(その2)
第34回 比布町北5線の枕状溶岩
第35回 士別市九十九山の川西層
第36回 朝日町岩尾内の柵留林道の斑れい岩(その1)
第37回 朝日町岩尾内の柵留林道の斑れい岩(その2)
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第40回 美深町小車の貝化石(その1)
第41回 美深町小車の貝化石(その2)
第42回 剣淵町西原の美深層(その1)
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第44回 士別市温根別五線川のチャート
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第46回 士別市朝日町南朝日の層状チャート
第47回 下川町ペンケ川の玄武岩