このコーナーでは,士別周辺の露頭をピックアップして,その様子を紹介して,その見どころやエピソードをお伝えします.いろいろな場所が登場しますので,皆さんも地質調査をしているつもりで楽しんで下さい.以前のこのコーナーに登場したものを見たい人は,このページの下の方から入って見て下さい. |
今回は剣淵町刈分川上流の,美深層の露頭をご紹介します。この露頭は剣淵町の東側の,桜岡貯水池北方の,以前採石場だったところにあります。剣淵町にお住まいの方も,温泉やスキー場以外は,国道40号線よりも東側の地域にはあまり行くことはないと思います。このホームページでもおなじみの「刈分川」とか「弥栄川」というのはほとんどの人が「知らない」と言いますね。でも,この剣淵町の東側の地域は,中生代の非常に古い地層もあれば,新しい地層もあって,なかなか興味深い地域なんですよ。 |
さて,これが美深層の露頭です。何度も登場している地層名ですが,剣淵地域では,丘陵地の大部分がこの美深層だといってもいいくらい,広く分布しています。時代は新生代第三紀中新世の中期,約1300万年〜800万年前ぐらいの地層です。陸上で噴火した火山からの溶岩や火山灰などを中心とした地層ですが,土石流堆積物や,普通の泥岩層などもあり,場所によって様々な種類の地層が見られます。 この露頭では,1m以上の大きな礫(礫は安山岩でした)を含む泥岩層が見られます。いや,「泥岩層」という表現はあまりあたらないかもしれません。というのは,ここの地層は大きな礫や小さな礫が多量にあって,砂や泥もすべてごちゃ混ぜになった状態だからです。 |
ちょっと近づきました。普通,地層というもののイメージは,教科書に出ているように,平らなしま模様があるものですよね。でも,この地層はしま模様があるのかないのか・・・あっても平らではなくてグニャグニャに曲がっていたりします。ずいぶんと地層のイメージとはかけはなれていますね。 これは,以前にもお話ししたとおり(すでに美深層は5回も登場しています),この地域の美深層は土石流堆積物が多く,この露頭もその土石流堆積物であるためです。火山が噴火した後に,大雨などによって地表の火山灰や泥などが水を含み,巨大な岩石を巻き込みながら斜面をいっきに猛スピードで流れ下るものが土石流です。周辺にあるすべてのものをなぎ倒して飲み込んでしまう,火山災害としては火砕流とならんで恐ろしいものです。 |
礫をよく観察してみると,安山岩がほとんどですが,黒い泥岩・花崗岩・砂岩などもありました。これらの礫は,その当時(1000万年前くらい)の地盤をつくっていた岩石と考えられます。黒い泥岩は非常に古い中生代白亜紀の深海底堆積物で,剣淵市街地から東側に多く分布しているものです。また,花崗岩は美深層よりも多分1000万年ほど古い岩石で,これも上士別など,剣淵の東側に多く分布しています。 こうしたことから,この露頭の美深層をつくった土石流は,東側から流れてきた可能性が高いと思われます。 |
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