このコーナーでは,士別周辺の露頭をピックアップして,その様子を紹介して,その見どころやエピソードをお伝えします.いろいろな場所が登場しますので,皆さんも地質調査をしているつもりで楽しんで下さい.以前のこのコーナーに登場したものを見たい人は,このページの下の方から入って見て下さい. |
士別市上士別の国道沿いにある大きな採石場の,日高累層群を続けてご紹介します。今回は,この山にある岩石について詳しく説明します。 |
写真ではわかりにくいと思いますが,この山に最も多く見られる岩石の,「黒色泥岩」です。同じ黒い岩石でも,中には非常に硬いものも見られますが,それは「ホルンフェルス」という岩石です。ホルンフェルスは,泥岩などが高温の状態に置かれたために変質(高温変成作用といいます)して,非常に硬い岩石になったものです。以前,上士別川南の花崗岩をご紹介しましたが,新生代新第三紀の2000万年前頃,このあたりの地下深くで火成活動があり,マグマが発生していました。このマグマの周囲にあった黒色泥岩が高温変成作用を受けて,ホルンフェルスになったのです。 ところで,黒色泥岩は海底に堆積した泥からできた岩石ですが,なぜ黒い色をしているのでしょうか? 皆さんがイメージする「泥」というものは,灰色や茶色などの薄い色のものではないかと思いますが,この山の泥岩は真っ黒です。黒い色の泥というのは,「酸素が少ない環境でできた」または,「炭化した植物が入っている」という条件でできたものがほとんどなんです。今回の場合は深い海の底でできた泥岩で,「酸素が少ない環境」の泥です。昔は町中に「ドブ」があって,スゴク臭いんですが,黒っぽい泥が沈んでいました。臭いドブには植物などはなく,酸素が少ない環境でした。岩石の中には鉄分が多くて,もし酸素があるとすぐに鉄と酸素が結びついてサビのようなものができたりするので,黒い色にはなりません。ところが酸素がないと鉄などの金属の細かい粒は黒っぽくなります。 そういうわけで,泥が黒いのは酸素が少ない環境ということで,浅い海には植物がいますから酸素が多く,ここの泥岩は深い海の底にたまったものということがわかるのです。 |
露頭に近づいてみると,確かに黒色泥岩が地層になっているのがわかります。かなり断層が多いので,地層はズタズタに切られています。さて,この黒色頁岩,深い海の底の堆積物ということはわかりましたが,深い海といってもいろいろありますよね。以前,チャートのでき方をお話ししたことがありますが,太平洋などの大海の中心部には,いわゆる「泥」は堆積していません。普段「泥」と言っているものは,岩石が非常に細かくなったもののことですが,それは陸地から川の流れによって海に運ばれます。しかし,大海の中心部(遠洋)には泥は届かないのです。遠洋の海底には,プランクトンの死骸などだけが降り積もっています(マリンスノー)。 こうしたことから,日高累層群の黒色泥岩は,酸素が少ないことから「深海底」であることがわかり,しかし「泥」であることから,「陸地からはそれほど離れていない海底の環境」で堆積したものであることがわかるのです。このような堆積物を「半遠洋性堆積物」といいます。普段は陸地からの泥は届かないけれど,台風が来たときなど洪水時には海底に泥が届くような環境です。 (続く) |
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