士別市上士別の国道沿いにある大きな採石場の,日高累層群の第5弾です。この露頭のシリーズ最終回ですが,ちょっと振り返ってみましょう。 |
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採石場中腹から国道をはさんで南西方向を見た風景です。とてもいい眺めでしたよ。奥の左側に見えている山は,第5回と第10回で紹介した石灰山です。第10回では,石灰山からこちらの山を見た風景を紹介しましたね。
さて,ところで上士別の採石場のこの山にある黒色泥岩やチャートは,海溝付近にできていた付加体というものなんでしたね。付加体には,海底の泥やプランクトンの死骸ばかりではなく,ハワイのような火山島がはさまれてしまうこともあるんです。火山島は海底にできた「おでき」みたいなものですから,平らな海洋プレートから見るととても出っ張っていて,海洋プレートと一緒に海溝から地下に沈み込むことができません。海溝に引っかかってしまうんですね。そうすると火山島は海底の泥などといっしょに,付加体の中にはさまみこまれてしまうというわけです。実は,今遠くに見えている石灰山は,かつての火山島にできたサンゴ礁なのです。
ある学者は,この石灰山は,古い付加体(上の方にあるんでしたよね)にはさみこまれていた火山島が,地震の発生によって崩壊して,付加体の新しくつくられていた部分(下の方です)に落ちてきたと考えています。何キロメートルもある大きなかたまりが,海溝の斜面に沿って落ちてきたというのです。これは壮大な話ですね。これも紹介済みですが,朝日町にいくつか見られる石灰岩も,このときの破片です。このように,超巨大な岩石のかたまりが落ちてきて,下にあった地層に取り込まれた岩石のことを,「オリストストローム」といいます。
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さて,5回にわたってご紹介しました上士別の日高累層群ですが,その1で出てきた「深〜いワケ」は,おわかりでしょうか?「なぜ上士別よりも東の方にしか日高累層群がないのか?」ということでしたね。これは,上士別よりも西の方(例えば士別市中心部とか)に海溝があり,そこに付加体ができたからです。また,そうすると上士別にある日高累層群は,一番陸地に近いところだということになりますから,付加体の一番古い部分だということになります。ここから朝日町,西興部,興部と,西に行くにしたがって新しい付加体となっていきます。今回はちょっとムズカシすぎましたか? |